第10回「自分のレールを敷くために」辛島デイヴィッド(作家・翻訳家・文化コーディネータ)

ブリティッシュ・カウンシルの「スペシャルトーク」。
第10回目のゲストは、日本財団国際業務担当のプログラムオフィサーであり、翻訳家であり、作家としてもデビューした辛島デイヴィッドさんです。日本のインターナショナルスクールから米国の大学へ、そして英国でマスターを学んだ辛島さんの経歴は一見特殊ですが、そこにはこれから留学を考える人たちにも役立つストラテジーがありました。
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日本、アメリカ、英国
--3つの国で教育を受けられたわけですが、その理由を教えてください。
父がイギリス人なのですが、日本で学んだ学校はアメリカンスクールでした。アメリカンスクールから英国の大学へ留学するのは非常に難しいんです。そこでボストンの大学を選んだ。そのままキャリアを重ねることもできたのですが、私は将来文学をやろうと思っていたので、さらに英国へ留学し、マスター(修士)をとりました。
たとえばね、弁護士になりたいとかエンジニアを目指すのなら、アメリカだけでもよかった。大学へ行って必要な知識を学んで資格をとれば、自分の将来がだいたい設計できる。でも僕は、そういうレールの敷かれていない道を選ぼうと思ったのです。そのためには、自分に確実に役立つ知識と経験、そしてキャリアが必要だった。英国にはそれがあったのです。
--具体的に、英国で得られたものはなんなのですか?
大きく3つに分けて話しましょう。ひとつはキャリア、もうひとつはスペシャリティ、そして環境です。
キャリアというのは、英国の大学のシステムです。英国は1年でマスターが取得できます。2年大学院へ行くお金もなかった僕には、魅力的な条件でした。
また英国には当時日本にはなかった「クリエイティブライティング」のプログラムがありました。クリエイティブライティングというのは、プロの作家を育てるための授業です。授業には作家さんやプロの編集者が来て、いろいろなノウハウを教えてくれる。プログラムを修了すれば必ず作家としてデビューできるという保障はありませんが、たとえばストーリーの組み立てとか、出版社へのプレゼンテーションの仕方とか、そういったプロフェッショナルのノウハウは学ぶことができます。自分の書いたものをエージェントや出版社が見てくれるチャンスもあって、これは本当に実践的な授業です。これが英国で得たスペシャリティ。
最後がいちばん大きかったんですが、英国という文学の環境に触れられたことです。英国には「グランタ Granta」という由緒ある文芸誌があって、これがいまもとても元気なんです。日本にいる時からこの雑誌を通じて、英国の文芸ムーブメントに興味を持っていました。中心にいるのは移民やその二世の世代。いろんな国の文化を英国に持ち込んで、それがどんどん当たって混ざって、新しいものが生まれている。そんな現場で文学を志すことが、英国へ留学しなくちゃいけない、いちばんの理由だったのです。
--とてもロジカルですね。英国留学が、すべていまのキャリアに活かされている。
結果論としてはそうです。
留学するなら、その体験を活かすことを考えないと。ああ、私の初めての小説の話もしなくてはなりませんね(笑。




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