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第10回「自分のレールを敷くために」辛島デイヴィッド(作家・翻訳家・文化コーディネータ)

文化に当たって混ざって、新しいものを生んでほしい

--「神村企画」はどんな小説なのですか?

いくつかテーマがあって、ひとつは「どんどん文化が混ざってゆく」状況の面白さを書いてみたかった。文化がからみあうというのはどういうことなのか? これを読まれる皆さんはいまから体験することになるんでしょうけれど。バイカルチュアルの環境だから生まれるドラマです。
もうひとつは、これも読まれる方には身近なテーマだと思うのですが、日本にいて敷かれたレールに乗るのではなく、海外をきっかけに自分の生き方のレールを敷くというやり方。これは目新しいことではなく、100年も200年も前から日本人がやってきたことです。夏目漱石とかね。村上春樹もそうです。
村上春樹は当初日本ではあまり評価されていませんでした。彼が海外へ出て行って、外国で認められた。その評判が日本での人気を生んだのかも知れません。それだけじゃなくて、異文化との交流を通して春樹の作品はどんどんよくなっていった。そんなことが僕のなかでは全部つながっている。「神村企画」は、そんなテーマで書いたものです。

--では留学を考える人たちには役に立つ本ですね

いや、そういった思いを僕は、一所懸命くだらなく書いた。読む人にはただくだらなく見えるかも知れませんが。
でもね、自分の国がありながら、日本ではなく海外で学ぼうという人は、自意識が高いんだと思うんですよ。自分のアイデンティティの立ち位置をすごく意識しているから、既存のレールに乗ろうとは思えなかったんでしょう? この国ではマイノリティな存在です。日本人はみなマジョリティだと思っているかも知れないけれど、そんなことはない。いろんなマイノリティが別の価値観を持ちながら、一緒に生活している。この、文化のクロスロードに立つだけでも得るものがあるはずです。
また、外国語で思考したり書くことで、新しい思考が生まれるはず。これも得るものが多いと思いますよ。
英国の大学院のクリエイティブ・ライティングの授業で「表現とは自分のボイスを見つけることだ」と教えられました。留学を通じて、自分のボイスを見つけてください。その声は決して自分を裏切りませんから。


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神村企画 The Making of the Next Kamimura
辛島さん初めての小説。ある役者がオーディションで手にした「役柄」とは?
講談社Birth 定価1,050円 ISBN-13: 978-4062828154

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