【日刊・英国生活】留学生のためのイギリス英語 発音講座(1)イギリス英語の多様性
「日刊・英国生活」では3回にわたって、聖徳大学人文学部教授 小川直樹先生から、留学生のためのイギリス英語についての特別記事をご寄稿いただきます。イギリス英語にかんする多数の著書をお持ちの小川先生。イギリス英語はなぜわからない?アメリカ英語と発音はどう違う?など、誰もが持っている疑問について、ご自身のご留学経験をふまえながら明快に語っていただきます。第一回はイギリス英語の多様性について教えていただきます。
※この記事の掲載にあたっては、英語・語学書の総合出版社アルクのご協力を頂きました。
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1.イギリス英語の多様性
イギリスに行って一番困ること。何だと思いますか。実はね、英語が通じないってことです。
「なに、わけのわからないこと言ってるんですか?」と言う人。あなたはまだイギリス経験のない人かもしれませんね。
イギリス通なら言うはずです。「そう、そのとおり!」と。
たとえあなたがTOEICで800点以上取っていて、英語に自信があったとしても、イギリスに到着した途端、その自信は打ち砕かれてしまいます。覚悟してください。
イギリスの紹介のサイトの文章としては、少々過激ですか。でも、これは本当です。これを知らずにイギリスに行ったら、もっと落ち込みますから。だって、アメリカ人だって、イギリスに行ったら英語がわからないって言うんですよ。
■いきなりガツーン!
私がはじめてイギリスに行ったときは、27歳のときです(けっこう遅いデビューでしょ?)。大学で英語を専攻し、大学院でも言語学、特に英語音声学や英語学を学んで、英語教師もしていました。イギリス英語にはかなり興味があって、発音も少なからずイギリス英語っぽかったはずです。
そんな私ですから、せっかくイギリスに来たんだから、現地の人の英語をできるだけ聞こうと思っていました。それで、ロンドンのあちこちで道を尋ねようとしたんです。
そうしたら、いきなりガツーンと来ましたね。だって、ロンドンの人の英語がほとんどわからなかったんですから。
■イギリス英語の種類
なぜそんなに英語がわからなかったんでしょうか。それは、イギリス英語の多様性のためなんです。イギリスは小さな国。面積は日本の2/3くらいで、人口は半分くらい。だけども、英語は極めて多様なんです。
この多様性は日本語と非常に似ています。まずは標準語があって、それに方言(言葉使い)ならびに訛り(発音)があるわけです。イギリスの場合、訛りで大きく地域分けすると、北から、北アイルランド(南アイルランドは別の国、別の訛りがあります)、スコットランド、北イングランド、中部イングランド、ウェールズ、南イングランドに分かれるんです。
これは発音での大雑把な分類です。言葉使い(文法、語彙表現など)まで考慮すると、数限りない種類が出てきます。イギリスは国は小さいのに、英語は本当に多様なのです。
■イギリス英語はなぜわからない?
イギリスでは標準語を、特に発音の点から「容認発音(Received Pronunciation、略称RP)」と呼んでいます。私たち外国人がイギリス英語を学ぶ場合、このRPの英語を学んでいるんです。
どんなに地方訛りがたくさんあっても、RPで話している人が多ければ、外国人はさほど困らないはずです。ところが、RPを話すのは中流以上のエリート層の人々で、イングランドの人口(5000万人くらい)のたった3%から5%と言われているんです。
つまり、RP話者は、イングランド人が20人いても、そこにせいぜい1人ということです。例えばロンドンで、10人に道を尋ねるとしましょう。この程度の人数では、RP話者に出会わなくても不思議はないということです。
しかも、イギリスには移民や外国人労働者が多い。特にロンドンは顕著です。このことが、イギリスの英語を一層わかりにくくしているんです。彼らは、出身国の訛りを持っています。イタリアとかインドとかギリシアとか。かなり強い訛りの人もけっこういます。
その多くが商業、サービス業にかかわっている。お店やホテルの従業員、タクシーの運転手などは外国人が多いんです。だから、私たちが旅行者としてロンドンを訪れる場合、この人たちの英語に触れる機会も驚くほど多いということです。
だからロンドンに行っても、標準語を聞ける可能性はかなり低いんです。たとえるなら、標準日本語だけを学んだ外国の人が、いきなり大阪に行った状況に近いのかもしれません。
なお、イギリス英語の訛りについては拙著『イギリス英語でしゃべりたい! UK発音パーフェクトガイド』(研究社)や、私が発音解説をした『究極のイギリス英語リスニングStandard』および『究極のイギリス英語リスニングDeluxe』(アルク)などをご覧ください。
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聖徳大学人文学部教授 小川直樹先生
IRICE英語教育学会理事・発音講座講師
1961年東京生まれ。聖徳大学人文学部英米文化学科教授。上智大学大学院言語学専攻博士前期課程修了。98年より1年間、イギリスのレディング大学言語科学学科で研修。専門は英語音声学・英語学・コミュニケーション。大学では、英語が好きになるための工夫を凝らした、音声重視の授業を展開している。アルクの通信講座「ヒアリング力完成発音トレーニング」などの監修も務める。


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